東京都港区立麻布小学校の150周年を記念して、全校児童380名の他、教職員、保護者ご家族、卒業生、地域の方々など多くの方に参加いただいてモザイクアート壁画を作りました。
全校児童で周年記念モザイクを作りたい
先生から、最初にお話をいただいたのが2024年6月。これまでも周年ごとにモザイクを制作をしていた同校。打ち合わせをしていく中で、中庭の壁(約20㎡)に巨大な壁画を作ることに決定。

描くのは…平和を願う「グルーの桜」
同校には 縁あって、麻布小にはジョセフ・グルーというアメリカ大使が植えたとされる桜から取り木した苗が植樹されており、今も大切に育てられています。
この桜は、残念ながら日米が戦争へと突き進んでしまった時に、日本を愛したグルー氏が平和への願いを込めて植えた桜。今もグランドの片隅で、子供たちを見守っている麻布小を象徴する桜です。
グルー氏の思いを引き継ぐべくこの桜をモチーフにすることになりました。
関山桜という八重桜です。

~ジョセフ・グルーとは~
日本とアメリカがまさに交戦状態に入った時の駐日米国大使。
非常に日本に理解を示し、日本の要人とも交流を深めた親日家であった。日米開戦を避けるべく非常に努力した。残念ながら開戦となり日本を離れる際に、「桜が咲くころ、時計の振り子が戻るように、平和がよみがえる」この言葉を残し、平和を願い植えたのが大使公邸の桜。
米国帰還後も、日本への誤解や偏見を解くべく働きかけ、戦争終結においても日本の立場、天皇の存続など、日本の為に尽力。終戦後も日米親善のために活動した。
この人物なくして、今の日本の平和はあり得なかったのではないかとさえ感じる偉大な人物である。
子どもたちだけでなく、学校関係者みんなで作る
4月から7月にかけての1学期の間に、全児童必ず一人一輪の桜を作ることを目標に、一クラスずつ4回の授業を実施。低学年は、あらかじめこちらが用意した花びらのパーツを使用。学年が上がるごとに自分でタイルを工具でカットしていく割合を増やし、6年生は全て自分でカットしてもらいました。実はタイルのカット、決して容易ではありません。ただ、あえて挑戦してもらいました。



初めは四苦八苦していた子どもたちも、3回目の授業を終えるころには「もっと切るタイルない?」と聞くほどカットが面白くなった様子。桜の花につぼみや葉もプラスして、さらに全校児童の桜を集めて大きなネット張りにしたものを最後の授業で壁に取り付けました。
1学期の授業が終わった後は、自由参加デーを設けて、児童の保護者ご家族、卒業生、先生方、事務の方、特別学級の指導員、主事さん、警備の方、麻布小に関わる全ての方々に声をかけ参加していただきました。壁に張っていくタイルはこちらで事前に仕込み。タイルパーツは全て一欠けらずつサンダーをかけ角を落として、子どもが触れても大丈夫なようにしてあります。



桜の木のあたりは戦争の暗いイメージの闇の夜空、そこに陽の光が差し込み、空が徐々に明るくなっています。平和の象徴ハトも平和の光に向かって飛び立っています。しかしまだ足元には戦争で壊された建物、レンガが残っています。残ってはいますが、清く真っ白な雪に一度覆われ、その雪も陽の光によって溶けてきています。ここにも平和の象徴であるオリーブの木の芽が芽吹いており、平和への兆しを感じさせるものになっています。
麻布小の子どもたちは大変国際色豊かです。まだ世界のどこかでは戦争があり、本当の平和な世界への思いを馳せた絵となっています。
構想7か月。制作7か月に及ぶ壁画が無事完成し、11月6日除幕式、11月14日150周年記念集会、11月22日150周年記念式典を終えることが出来ました。
この大きさので、しかも小学生が作るモザイク壁画で、タイルをフルカットしたモザイクアート。
日本中探しても決して他にはない、品格を重んじる麻布小にふさわしい、みんなの心に残る作品が出来ました。

制作の様子を動画にまとめまてみました。ぜひご覧ください。

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